2023/10/16 22:31

今回はこちら、

通称 Kathyのデニム

にまつわる、Travel Jackのストーリーを紹介しよう。

これは彼が、20歳ぐらいの時に付き合っていた、元カノのデニムジャケット。

当時2人はアメリカ、ニュージャージーで同棲していた。家はニューヨークからも程近く、2人はよく街へ遊びに出かけていた。“いつかニューヨークで一緒に住みたいね“と、よく夢を語り合った。


幸せすぎた2人の別れは、あまりにも突然だった。


その日、Jackはいつもより遅く起きてきた。
いつものように、夜通しKathyと大好きなビールとウイスキーを飲んでいたのだ。

Kathyの姿は、家のどこにもなかった。

代わりにテーブルに、"朝ごはんのサンドイッチを近くのデリに買いに行ってくるわ"というメモが置かれていた。

相変わらず、気の利く優しい奴だな、とJackはKathyの為に、自慢のコーヒーを淹れて帰りを待っていた。


程なくして、ドアをノックしたのは、Kathyではなく、警察だった。

Jackは瞬間的に、嫌な予感がした。

彼女がいたデリで強盗事件があったという。
この時点で、Jackには全て分かってしまっていた。


Kathyはもう帰ってこない。


いつも良くしてくれている店員のおばさんを庇い、強盗に抵抗したのだという。


Kathyらしい。



その数ヶ月後、Jackは2人の家を出て、兵役に行く決断をした。
家には思い出が詰まりすぎていた。

Kathyの服も、化粧品も全てそのままであったが、
Jackには捨てられなかった。
まだ彼女がふと帰ってくるかも知れないという思いを、拭いきれなかった。

親友に促され、やっとの思いで彼女の荷物をほとんど片付けたが、どうしても片付けられずに、ずっと手元に残してしまったものがあった。

彼女がある肌寒い日に貸してくれた、
デニムジャケットだ。

Jackには小さすぎたが、
半袖でいるより、幾分マシに思えた。
何より、彼女の優しさが嬉しかった。


そんな思い出の、デニムジャケット。
内側の落書きが、また彼女らしくて、大好きだった。

つづく。

(この話は勝手に想像した完全なフィクションです)